鳥籠の中の少女

「俺も銀木の力になりたいな。俺は大切な人とか失った事無いから、本当の気持ちは分からないだろうけど。でも、出来る事があるのなら力になりたい」



楼大の揺らぐ事のない、強く思う心が瞳を見てて、分かる。



楼大に話してよかった。



「神賀は優しいね。その心が力になるよ」



愛璃が悲しそうに微笑む。



「俺さ、最近思ったんだけど、人の心には誰しも闇があるんだな」



楼大が遠い目をして、言う。



「此処で笑ってる人達だって、何かしら闇を持ってるんだよな。それが大きいか、小さいかなんて、人の心次第だけど、人はそれを知らない」



「でも、楼大は気付いた。俺が今、笑ってるのは闇が小さくなったから。姉が死んだ時は自分を見失ったけど、よく考えたら、人って何時死ぬか分からないんだなって思った。じゃあ、悔いの無いように生きようって思った」



「潤樹は強いんだな。俺は大切な人を失った時、そんな風に考えられるか、分からない。ずっと、引きずると思うな」



「強くなんかないよ。俺も周りに助けられて、今の自分がいるんだから。人は弱いんだ。でも、大切な人がいるから強くなれる。だから、暗い過去も乗り越えられるんだと思うよ」



「潤樹は其処まで知ってたんだ。あたしは、最近気づいた。潤樹が来て、漸く、手を差し伸べる事が出来て、今まで馬鹿だったなって思う」



愛璃は涙を堪えながら、『あたしは狡かった』と言った。



「そんな事無いよ。愛璃だって、ずっと、後悔してたんだじゃない?手を差し伸べられなかった事。俺はその思いだけでも嬉しいと思うけどな」



「俺もそう思うな。確かに過去は一緒にいてやらなかったんだと思うけど、今は違うだろ?それに、時が経てば経つほど、出来なくなるもんだぜ?」