「さ、須藤くんはそこに立って!瑞樹くんはそこよ」

凛音が舞台の立ち位置を指示する。

「二人は同じ天使だけど、全く正反対なの。須藤くんは愛をストレートに表現する。瑞樹くんは、愛を伝えられず身を引くのよ」

清香がワクワク顔で舞台を見つめていた。

「なんて絵になる3人なの!加奈、これは本番見ものだね!」

「清香~!私はワクワクどころか、ハラハラしちゃって心臓に悪いよ」

でも、瑞樹も十夜も凛音が見込んだとおり、舞台栄えする美しい身のこなしで驚いてしまう。

二人とも演技経験ないはずなのに、才能ってこういうこというのかな。

「須藤くん!セリフそんなに多くないんだから、頭に入れてきてよ」

凛音が十夜にきつい口調で注意する。

「久世、俺はこんなくさいセリフは言えねーよ」

「あら?加奈さんには言ってるんじゃない?」

十夜はその言葉を聞くなり、台本を舞台にたたきつけて舞台を飛び降りた。

「加奈!須藤くんと凛音ってほんと犬猿の仲だね。絵的にはお似合いなのに」

「そうみたい・・・」

十夜はセリフだけはどうも照れくさいらしく、ぶっきらぼうにつぶやくだけだ。

「じゃ、瑞樹くんに演ってもらおうかな」

凛音は瑞樹を振り返り、セリフを言うように指示する。