月夜の天使

何も見えない。

何も聞こえない。

ただ頭に浮かぶのはあなたのことだけ・・・。

瑞樹、瑞樹、瑞樹。

私、このまま死んじゃうのかな。


川底へ深く深く沈んでいく。

意識が遠のいて、思考がなくなっていく。

・・・光が見える。

加奈を一すじに射す一本の光。

それは、宇宙の彼方から射し込む光。

下弦の月が加奈へと送る一本の道すじ。

『なに?この光は・・・。温かくて心地よい』

ふいに抱きかかえられた気がした。

バシャーン!

「ぐっ!ごほっ、ごほっ!」

なに?急に息ができるようになった。

「あ・・・」

見ると、加奈の周りの水は一斉に引き、ゴーゴーと音をたてて竜巻のように加奈を取り囲んでいた。

その水流の竜巻の中心には、加奈と十夜。

十夜は加奈を抱きかかえ空を一心に見つめていた。

ゴォー!!

「きゃっ!」

風が吹き荒れ加奈は思わず目をつぶった。

ふわ・・・。

宙に浮く感覚がした。

目を開けると、十夜と加奈は風に乗って橋の上を飛んでいた。