月夜の天使

その騒動はそこであっけなく幕を閉じた。

「なんなの、あのぶりっ子!加奈、あんな子に負けるんじゃないよ!」

「清香、負けるもなにも・・・」

清香の怒りはしばらく収まりそうもない。

騒動が幕を閉じて清香と二人で体育館から続く廊下を歩く。

「加奈先輩!」

後ろから聞き覚えのある声がした。

振り向いた清香の第一声は、「げっ!」

くるくるの巻き髪。

くりくりした大きな瞳。

全校の女子を敵に回した女、美織。

「美織、加奈先輩とお友達になりたいの!二人がつきあっててもいい!十夜先輩の事、もっと知りたいの!」

「開いた口がふさがらんね・・・」

清香はギブアップのしぐさをした。

「美織ちゃん、私、須藤くんとつきあってるわけじゃないからそんなに焦らないで」

加奈はなんとかなだめようとしたが、美織は引き下がらない。

「だって十夜先輩は絶対、加奈先輩が好きだもん!」

いつまでも離れない雰囲気の美織に、清香はまかせたと言わんばかりに先に行ってしまった。

結局、美織の情熱にほだされ、加奈は美織と一緒に帰ることになってしまった。

美織の人懐こい笑顔はどこか人を惹き付けるものがある。

「それでね、十夜先輩ってクールに見えるけど、実はすっごく優しいの!美織がクラスの女子に泣かされてた時に、『弱い者いじめするなら、俺が相手するぜ』って助けてくれて」

美織はよくしゃべる。

十夜の話ばかり楽しそうに次から次へと。

でも、十夜って案外良いとこあるんだな。

美織が惚れたのもわかる気がした。