月夜の天使

「ここは・・・?」

見覚えのある風景。

ああ、私の部屋だ。

目が覚めて気がつくと、自分の部屋のベッドに寝ていた。

…怖い。

あんなの嘘よ。こんなことあるわけない。

不安だった。

入り混じる全ての感情の中で、不安が勝っていた。

「・・ずき。み・・ずき。」

瑞樹!

瑞樹どこ?ねぇ、教えて。あんなの嘘よね?

加奈は不安な気持ちをかき消すように、家中歩き回って瑞樹を探した。

「瑞樹、どこ?」

リビングにいた母にたずねる。

「瑞樹ならさっき外出したわよ。それより、あなたさっき貧血で倒れたばかりなんだから、寝てなさい。お友達の須藤くんが連れてきてくれたんだから、明日ちゃんとお礼言いなさいね」

母の忠告も聞かず、加奈は家を飛び出していた。

外は雨。

瑞樹はきっとあそこにいる!

「はぁ。はぁ。」

しばらく走ってきたあと、加奈は息をきらし立ち止まった。

いつも、ここで私の悩みを聞いてくれた。

いつも、私を励ましてくれた。

いつも、温かい微笑みをくれた。

いつも、いつも、私を護ってくれた。

いつも・・・いつだって、大好きだった・・・。