月夜の天使

校内には各クラス、各クラブの催しものの宣伝ポスターがところ狭しと飾られている。

その中でも演劇部のポスターは盗まれるくらいの好評を博していて、「月夜の天使」の前評判はすごく高い。

ポスターはモノクロの凛音の写真で、雨に濡れてたたずむ凛音の表情がなんとも切なく物語の切なさを予感させる。

「さすが凛音よね。ポスターが盗まれちゃうなんて。でも女優顔負けの美しい写真だもん。私も盗んじゃおっかな!」

清香がポスターをまじまじと見つめる。

「清香、部員がそんなことしちゃだめだって」

「あはは。でもこの客演の須藤十夜と渡瀬瑞樹って名前も大きいと思うな。ねっ加奈!」

「うん、そうだね」

ポスターの出演者の名前の中には、客演として、十夜と瑞樹の名前が載っていた。

校内では、1、2を争う人気の二人だ。

これはすごい宣伝よね。

いつもそばにいる二人だから、客観的にみたことなかったけど、こうして見ると、いつもそばにいられる私ってすごく贅沢で幸せ者なんだって思えた。

「加奈、お腹空いたね。何か買って久々に屋上でもいかない?」

「あ、私、やきそば食べたい!」

「加奈も?奇遇だね~!」

清香とこうして一緒にいると、全てが順調のように思えて不安も頭の片隅にしまっておける。

ありがとう・・・清香。