月夜の天使

「加奈~!おっはよう!!」

清香が明るい表情で加奈に近寄る。

「とうとう、学園祭の日がやってきたね!」

「うん!」

そして、何かが起こりそうな予感・・・。

「加奈、昨日どこに行ってたの?演劇部の準備サボったでしょ~?」

清香が軽く加奈の頭をこづく。

昨日は「天使の泉」にいたなんて言えるはずもなく、加奈は「ごめん、用があったんだ」と笑ってごまかす。

なんだか、とても長い1日だった。

シオンとの音楽室での出来事、その後月野いずみから聞かされた前世の私たちのこと。

いずみさんに、カオリさんに、シオン。

トオヤとミズキのこと。

そして・・・最愛の娘、リオン。

久世凛音。

あんなに小さかったあなたが、今、同じ歳の女性として私の前にいる。

前世のカナンとシオンの娘。

リオン、あなたを置いていってしまった母をあなたは憎んでいますか・・・?

「加奈、そういえば、瑞樹くんも昨日現れなかったけど、どうしたのかな?」

清香が思い出したように問いかける。

「うん・・昨日は用事があったみたいで、今日も遅れるみたい。でも舞台までには間に合うはずよ」

「瑞樹くん、主役みたいなもんなのに、すっごい余裕!今日の舞台楽しみだよ~!」

清香は朝から上機嫌だ。