月夜の天使

私の魂が滅びれば、月の一族の命も全て消滅する。

でも、月はきっと、私たちをその御許へ誘うでしょう・・・。

「加奈、十夜」

香織の後ろから歩いてくる神秘的な空気をまとった女性。

記憶のなかの、赤い服を着た小さな女の子の姿と重なる。

「姉さん、加奈の覚悟は決まったよ」

月野いずみは、無表情のまま加奈の前まで歩いてくる。

そして、立ち止まると、ニッコリと微笑んだ。

いずみさんのこんな笑顔は初めてだ・・・。

「カナン、私たちはこれまでずっと、あなたに生かされてきた。月から離れた私たちに生きる術はなかったのだから。でも、やっと月へ還る時がきたのね。私たちはあなたの魂に従うだけよ」

そう言って、いずみは枯れかけた月見草を加奈に差し出す。

この花には、永遠の愛がいっぱいつまっている。

「ありがとう、みんな。私、最後まで戦う。みんなへの愛を込めて・・」

月見草が、加奈の手の中で、ゆっくりと、純白の花びらを開き、愛を煌かせていた。