ああ、前世の記憶が少しずつ甦ってくる。

カナンはミズキを愛して、裏切られて、また愛して・・・。

でも、気づいてしまった。

十夜への想い。

『女性に生まれたい』

その言葉は瑞樹と十夜に向けられたもの。

カナンは言わなければいけない!!

こんな残酷な言葉を。

十夜は、加奈の瞳から流れる涙の意味をつかみきれない表情でじっと見つめる。

「加奈・・・何か言ってくれ」

トクン・・・。

カナンは瑞樹の愛も十夜の愛も、全て知っていたのに・・・。

一番残酷なのは、カナンだった・・!!

「・・・愛してる」

十夜の手が一瞬震える。

「私、十夜を愛してる。瑞樹を愛するように、十夜のことも愛してる。二人を、とても愛してる」

十夜の瞳が見開かれる。

「私、残酷ね。こんな言葉を言うために、女性に生まれ変わりたかったなんて・・・」

十夜の腕がスッと加奈の頬から離れ、力なく降ろされる。

「十夜、私、魂の言葉を思い出したわ」

「加奈?」

加奈は凛とした瞳で十夜を見上げる。

その瞳は、残酷なほどに美しいアイスブルー。