加奈は驚き十夜に向き直る。

振り返った加奈が見た十夜の瞳は、嘘偽りのない確かな輝きに満ちている。

この瞳。

そう、十夜はいつもこの瞳で私を見守ってきた。

わかる、今ならわかる。

十夜の深い愛。

この瞳に私はいつも包まれていた!

「十夜、そんなことしたら十夜はどうなるの!?」

「・・・俺は、現世でサヨナラだ。俺はこの須藤十夜としての命を全うできればそれでいい」

パシーン!!

加奈の右手が風を切り、十夜の左頬を叩きつける。

同時に加奈は十夜の胸に飛び込み、力強く抱きしめる。

痛い、心が痛いよ。

右手から伝わる痛みが加奈の胸を締め付ける。

「加・・奈?」

「なに言ってんの!?また私を置いて先に逝っちゃう気?いつも勝手なんだから!!」

十夜の宙でとまった両腕から戸惑いを感じ、加奈はさらに強く十夜を抱きしめる。

「十夜が死ぬなら、私も一緒に逝く・・・!」

十夜が加奈の頬を両手で覆い、グイっと上に向かせる。

加奈の心を読み取ろうとするような強い眼差し。

「加奈・・・本気で言ってるのか?」

カナンはいつも、十夜の深い愛に気づかないフリしてた。

瑞樹を愛してしまったから。

でも今やっとわかった・・!!

前世から、カナンの深い愛の叫びが聴こえる。

『カナン、何度生まれ変わってもこれだけは変わらないよ。トオヤ、ミズキ、カナンは二人が大好き。』

二人が、大好き・・。

二人が・・・!!!

月の神様、カナンは残酷でしょうか?