月夜の天使

カナンはリオンをそっとミズキのそばに寝かせる。

「ミズキ、リオンをお願い」

月見草の種を握り、目を閉じる。

月の神様。

私の最初で最後のわがままです。

どうか、お願い、ミズキを甦らせて。

ミズキは砂浜に倒れこんだまま、青白い顔でその瞳を閉じている。

トオヤ・・私もあなたと一緒に逝くわ。

ゆっくりと、月見草の種が開いていく。

リオンはその瞳をしっかりと開ける。カナンに笑いかけるように・・・。

「リオン、愛してるわ・・・必ずまた会えるから!!」

月見草が月の光に呼応するように、夜の闇にゆっくりと純白の花を咲かせていく。

月の鼓動が聴こえる。

私の命の音が聴こえる。

ミズキ・・・あなたに私の命を!!

月がその姿を闇に隠し始める。

月見草がゆっくりとしぼみ、砂浜にその花びらをうずめる。

「オギャー!!オギャー!!」

「リオン・・・?」

天使の瞳をもつその人は、リオンの泣き声に目覚める。

「僕は倒れて・・・それから・・?」

傷が・・傷が消えている。

「!?」

シオンとトオヤ・・・何が、何が起きたんだ・・。

リオンがミズキの手を握り力強く泣き叫ぶ。

「リオン・・いったい」

僕はリオンの方を振り向く。

そこに・・・天使がいた。

安らかな表情を浮かべ、月を仰ぐように倒れている天使。

カナン!!!

「う・・ぁ・・ああー!!」

僕は声にならない声を出す。

月よ・・・なぜあなたは僕を生んだのか。

僕の存在は・・・・

    


こんなにも、残酷だ!!!