月夜の天使

数ヶ月のち・・・カナンは女の子を産む。

名前は・・・。

「カナン!いずみが呼んでるよ」

『占いの館・天使の泉』

トオヤはカナンの部屋をノックする。

「トオヤ、わかった。今降りるわ」

カナンはベッドですやすやと眠る娘を愛おしそうに見つめる。

「ゆっくりおやすみ・・・リオン・・・」

春の暖かい風が、『天使の泉』にそよそよと吹きつける。


1階に降りると、トオヤといずみがカナンを待っていた。

トオヤ・・・ワタシにすごくよくしてくれる。

とても強くて愛情あふれる瞳をもった人。

いずみ・・・5歳になったばかりのおしゃまな女の子。でも、ワタシの気持ちをすごく癒してくれる。

「カナン、あなたの記憶はまだ戻らないけど、あなたの境遇は前にも話した通りよ」

いずみが小さな体で精一杯胸を張り、カナンを見上げる。

「記憶が突然戻ってもいいように、言っておくわ」

いずみは重要なことを言わんとばかりに、目を吊り上げる。

「あなたはひどいショックを受けて記憶を失ったはず。だから、思い出すのはあなたにとってはつらいことだわ。私からあなたに言いたいのは、一つ」

カナンは小さく息を呑む。

「つらくても、あなたは永遠の命を捨てちゃだめ。あなたは永遠の愛を持ってるのだから」

永遠の愛・・・・。