月夜の天使

あれから、何ヶ月がたっただろう・・・。

俺はずっとカナンを探し続けている。

ミズキはあのあと、突然狂ったように叫びだし、

俺の前から姿を消した・・・。


カナン・・・愛している。

君が今どんな状況でも、たとえ俺を永遠に愛すことはなくても、俺は永遠に君を見護り続ける。

会いたい。

君の声が聴きたい。

君の髪の毛さえ、こんなにも愛しいのだから・・・。


雑踏の中、懐かしい匂いを嗅いだ気がした。

フワ・・・。

長い黒髪が風に吹かれて優しく揺れる。

その愛しい髪・・・。

「カナン・・・!」

少女はゆっくりと振り返る。

まるでスローモーションのように彼女のその髪、その瞳、その唇の動きがトオヤの瞳の中で一つ一つコマ送りされる。

永遠に愛しい人。

彼女はそこに確かに立っていた。

「あなたは・・・誰?」

ダレカ、ワタシを、見つけて・・・。

少女は戸惑いの表情を見せる。

「私、なんでここにいるんだろ・・?」

ワタシの愛は、ドコなの・・・?

「私は・・・誰なの・・・?」

記憶を失った少女。

彼女にあるのは、ただその美しい瞳と愛を叫ぶ声。

「カナン・・・!!」

トオヤが優しくカナンを抱き寄せる。


「君が誰であっても、愛してる」


少女はきょとんとした表情でトオヤを見つめる。

少女のお腹には、小さな命が宿っていた。