月夜の天使

トオヤが運転手を捕らえ、その腹に一撃を加える。

「う・・・」

男は倒れ意識を失う。

「ミズキ!!」

砂浜に膝をつき、宙を見上げるミズキ。

その胸にはナイフが突き刺さり、血がとめどなく流れ落ちる。

虹色の光がミズキを優しく照らす。

「カナン、これ・・・君の好きな月見草だ」

ミズキは月見草の種をカナンの手に握らせる。

「ミズキ・・・覚えててくれたの?カナンの好きな月見草・・・」

カナンの涙がポトリ、と種に落ちた・・・。

虹色の光を受ける月見草。

ゆっくり、ゆっくりと、茎が伸び、つぼみを膨らませていく。

月にだけその顔を見せる月見草。

ひっそりと、ゆっくりと、その純白の顔を開いていく。

「月見草が咲いた・・・」

シオンがその瞳を見開く。

「月の再生が始まった・・・」

トオヤがつぶやく。

カナンは、ミズキの頬をその手で覆い、まるで聖母のような清廉な表情を見せる。

ミズキがカナンの手をとり、「・・・もう、いいよ」
と、つぶやく。

「ミズキ・・・カナンは、永遠に・・・」

その時、月光の全てがミズキに降りそそぎ、ナイフがミズキの胸から滑り落ち、傷口がみるみる塞がっていった。

「ミズキ、カナンは、永遠にミズキのこと・・・」