「トオヤ、カナンは俺がもらうよ」

美術館の外に出てきたシオンとトオヤはお互いを探り合いながら対峙する。

「カナンの魂を奪う気か」

「いや・・・俺とミズキは双子だ。ミズキがあれだけ惚れた女だ。俺も試してみたくなったんだよ。『永遠の愛』とやらをね」

「残念ながら、カナンが惚れてるのはミズキだけだ」

トオヤが自分に言い聞かせるようにつぶやく。

「どうかな?カナンが今のミズキに会ったら・・・。カナンはめちゃくちゃになるかもしれない。ミズキに会わせるのは危険だが、俺はそっちに賭けてみたのさ」

「まさか・・・!!」

トオヤが美術館を振り向く。

「シオン、お前・・・ミズキとカナンを会わせるために俺を連れ出したのか!?」

「早く行ったほうがいいんじゃないか?」

シオンは不敵な笑みで答える。

トオヤは美術館に向かって走り出す。

カナン・・・無事でいてくれ!!

バン!!

カナンがいた部屋に飛び込むトオヤ。

「いない・・どこだ、カナン!!」

美術館中を探し回る。

ミズキの絵の前にたどりつくトオヤ。

「カナン・・・どこ行っちまったんだ・・?」

微かに気を感じる。

これは・・・ずっと身近に感じていた気。

ミズキ・・!!

だが・・何かが違う。

温かい気の中に、なにか、不穏な淀みを感じる。

「カナン・・」

ミズキの絵を見上げ、穏やかな顔の『カナン』を見つめるトオヤ。

「カナン!!戻って来い!!!」

静寂の館内にトオヤの悲痛な声が響き渡る。