月夜の天使

1ヶ月後

「いってきまーす!」

天気のいい5月の初旬、カナンは元気よく家をでる。

「トオヤ、今日はまだ迎えにこないなぁ」

カナンは辺りを見回しトオヤを探す。

ふと、通りの向こう側の雑踏の中、その一点にカナンの瞳は吸い寄せられる。

男性の後ろ姿。

カナンは4年前の記憶をたぐりよせる。

彼が4年で成長しただろう姿、その後ろ姿に重なり、カナンは思わず声を張り上げる。

「ミズキ!!」

「カナン、忘れ物よ!」

玄関からカオリが出てくる。

「カナン、どうしたの?」

カナンは男性の姿だけを追いかける。

そして、無我夢中で道路に飛び出していく。

「カナン、危ない!!」

キキー!!

ドン!!!

カオリに突き飛ばされるカナン。

「・・・っ」

「カオリ・・さん?」

車の横にカオリが倒れている。

「カオリさん!!」

「カ・・ナン、あなたを最後まで見届けたかったけど、ここで私の使命は終わったみたい。でも、また、必ず会えるわ・・。トオヤと・・行くのよ。天使の泉、そこに、いずみが・・」

「カオリさん!!」

カオリは安らかに瞳を閉じる。

悪い夢。

これは悪い夢だ。