『天使の泉』は跡形もなく炎に飲み込まれ、カナン、トオヤ、ミズキの3人はそれぞれ別の孤児院にもらわれていった。

いずみを失ったカナンの悲しみは深く、しばらくはトオヤやミズキに会いに行く気力さえなかった。

しかし、その悲しみも徐々に、徐々に時が癒していく。

傷が癒されていくたびに、カナンは思う。

『自分には何も残っていないのだ』と・・・。

こんな自分が永遠に生きる意味などあるのだろうか・・・。

カナン12歳の春。

「カナン、あなたを養子として受け入れたいという方が来ているわよ」

その女性はカナンに優しく微笑みかける。

「カナン、私はカオリといいます。あなたの一生を見守る。それが私の希望よ」

カナンはその手にすがるしかなかった。

12歳のカナンと25歳のカオリ。

手をつないで歩く二人を月が優しく見つめ続ける。