「いっぱい買っちゃったね、トオヤ。ヨーヨーも買ったし、いずみお姉ちゃん喜ぶね、きっと!」

考え込むように立ち止まるトオヤ。

「カナン、かすかに奴らの気を感じる・・・」

「え・・?」

「天使の泉からだ!いずみとミズキが危ない!カナン、走るぞ!」

トオヤはカナンの手をつかみ、走りだす。

カナンは下駄を脱ぎ捨てトオヤについていく。


ドン!

急に立ち止まったトオヤの背中にぶつかるカナン。

「どうしたの?トオヤ・・・」

バシャ・・・!

カナンは持っていたヨーヨーを思わず取り落とす。

「おねぇちゃん・・・ミズキ・・・」

ゴォー!!

炎が『天使の泉』を包みこむ。

炎のうねりが夜の闇を飲み込み、月明かりを覆い隠す。

「カナン、俺が中へ入るからここで待ってろ」

「やだ・・・ミズキ、お姉ちゃん、カナンも行く!」

「だめだ!」

トオヤの瞳が青く輝く。

「いや!カナンはぜったい・・・」

そう言いかけたカナンの目にこちらへ向かってくる人影が映る。

「ミズキ・・・」

その少年はいずみを抱き上げゆっくりとこちらへ歩いてくる。