「待って~!トオヤ!ミズキ!」

太陽が照り付ける昼下がり。

子供たちの楽しい笑い声が聞こえる。

「カナン、早く来いよ!月見草が今夜咲きそうだ」

「わーい!」

10歳のカナン、トオヤ、ミズキが一緒に遊んでいる。

「月見草って夜にしか咲かないのよね」

小さなカナンがしゃがんで月見草を覗き込む。

「うん、月が出るころに花開いて、翌朝月が沈むころにはしぼんでしまうんだ」

ミズキが月見草にそっと触れる。

「なんだか哀しいね。夜に花開いて、誰にも知られずにしぼんでいくなんて」

「カナンはほんとに月見草が好きだね」

トオヤがカナンの寂しそうな顔を覗き込む。

「うん、一夜だけの可憐な花だって、いずみお姉ちゃんが言ってたの。カナンたちは永遠に生きられるけど、月見草は誰にも知られずにひっそりと消えてしまうんだよ」

「カナン、月見草はしぼんでしまっても、雨の日にまたその種を落とし、次の夏にまた純白の花を咲かせるんだ」

ミズキがカナンを慰めるように微笑む。

「そっかー。それじゃ、月見草もちゃんと生まれ変わってるんだね!」
カナンの哀しい顔が笑顔に変わる。

「そうだよ。僕たちと一緒だ」

「カナン、トオヤ、ミズキ!お昼ごはんよ!早く戻ってきなさい!」

月野いずみの呼ぶ声がする。

「は~い!」

孤児院『天使の泉』に3人の子供の声がこだまする。

この地は、3人の運命の恋を見守ってきた。

夢と幻のように儚い月見草とともに・・・。