頬の血をふきとる詩苑。

あ・・・れ?

加奈は詩苑のメガネの下の瞳を初めて間近でみる。

似てる・・・。

瑞樹に似てる。

どことなく、儚くて、物憂げな優しい瞳。

詩苑は立ち上がって歩き出す。

「明日・・・楽しみにしてるよ。君の娘も待ちわびているだろう・・・」

詩苑は教室の外へと消えていった。

・・・娘?

「十夜、今のどういう意味?」

加奈は十夜の胸をさらに強くつかんだ。

「加奈・・・」

十夜は苦しそうな表情を浮かべ、加奈の瞳を見つめた。

「加奈、君にはつらい話になる。それでも聞きたいか?」

・・・つらい話。

それでも、私は真実を知らなければいけない。

「うん、十夜、私ほんとうのことが知りたい」