瑞樹には結局何も聞けなかった。

十夜ともあれからもいつもどおり何も変わらない。

凛音も相変わらずタフに瑞樹と十夜に稽古をつける毎日。

学園祭もとうとう明日に迫っていた。

「加奈、いよいよ明日ね!楽しみだなぁ!瑞樹くんと須藤くんの演技」

「そうだね。清香も頑張ってね!」

放課後の音楽室で、

清香と加奈、そして高月詩苑が掃除をしていた。

「あ、やばい、遅くなっちゃう!加奈、ごめん!機材運びとかあるから先に部室行くね!」

「うん、私もここ終わったらすぐ行くから!」

「サンキュー!」

清香が慌てて音楽室を出て行く。

ふと、後ろを見ると高月詩苑が静かにゴミを集めていた。

「高月くん、ごめんね。清香明日の舞台の準備で大変だから大目にみてあげて」

「気にしてないよ」

詩苑の声は静かだ。

高月詩苑。

あまり話したことないから緊張しちゃう。

「渡瀬さん」