そして私はあの人に初めて会った日のことを思い出していた。


私が本気で信じ、本気で愛した人のことを…。



――時は遡(さかのぼ)って2年前…――


それは私が中学2年生の頃だった。


その頃はまだ由茉たちも付き合っていなかった。


6月半ば、1人の男子生徒が転入して来た。


それが、『酒山 拓也(さかやま たくや)』だった。


彼は全てが完璧な人だった。


整えられた顔、抜群の運動神経、頭脳明晰、そして優しい性格。


何でもこなしてしまう、まさに完璧な人。


そんな彼が全生徒を虜にしてしまうことに時間はかからなかった。


先生までにも気に入られてしまうくらい、全てにおいて優秀だった。