「今日のお弁当も美味しそうだね」


彼は笑う。
私はその表情を直視出来なかった。


「う、うん……。ありがとう」


――気まずい。

雨が振っている中あんな悲しそうな和泉くんを見た後に、
こんなキラキラした顔を見せられるとどうしたらいいのか私は分からなくなっちゃう。


もう元気になったの?
あの日どうして濡れていたの?



たくさん聞きたいことがあったのに、
いざ本人を目の前にすると聞けなくて。


昨日の一条くんの真剣な瞳を見ると、生半可な気持ちでは尋ねていいものか判断できなかった。



……私って臆病だ。



たくさん和泉くんから元気をもらったのに、
私は元気をあげられない。気の利いたことも言えない。



食べかけのお弁当を鞄の中に仕舞いこんで、
私はある場所へと向かった。