「昨日は本当に梓ちゃんの弟クン。怖かったよ」
「今度からは面倒事持ち込まないでね」
ぐさっと釘をさしておく。
「うぅ……梓ちゃん、俺に最近当たり強い……」
「そ、そんなことないよ?」
半分涙目になっている一条くんをよそに私は胸に引っかかりを感じていた。
私の横の空いた席に目をやる。
「今日も、和泉くん休みなのかな……」
「まあ、アイツ三ヶ月に一度はこういう期間あるから」
「え?それって――」
私が事情を聞こうとした瞬間、
「言えない」
いつもニコニコしている一条くんに表情が消えた。
「理由はいくら梓ちゃんでも言えない。ごめんな」
真剣な瞳で、何か重大なことを隠していることはバカな私でもわかった。
「……分かった。聞いてごめんね」
「いいってことよ」
「……一条くん、1つだけ教えてくれないかな」
「ん?……そうだなぁ~梓ちゃんが俺にキスしてくれたら…」
こんな時まで冗談言うなんて!!!
「イチジョウクン?」
「……ハイ……なんでしょうか……」
「和泉くんと結構仲が良いって言ってたのって本当ってこと?」
「ありゃ。疑ってたの~!?本当だって。親友だよ☆とかは言わねぇけどなぁ~」
ケラケラ笑う一条くんだったけど、
和泉くんと一条くんの間に何かがあるということだけはこの日はっきりとわかった気がした。