「もう、あの魔術は、見せてくれないんだね…」


居酒屋で、わいわいと騒ぐみんなを見ながら、私は1人、鶏の唐揚げなんかを食べていた。


シマは、私と目が合っても、特に反応しない。
前のときは、にっこり笑って、「さあ、今日はこんなものがあるよ」と、自分がいま聴いている音楽のことを話したり、CDを貸してくれたりした。


でも、もう、あの魔術のように出てくる、ハトや羊はもう、私には与えられないのだ。


自業自得だった。すべて。
愚かな、私。
私は、今日はやけ食いしてやる! と思っていた。


そのとき、だった。


シマが、私の横に、でんと座ってきたのだ。


「なに食ってばかり、いんの?」

「えっ…」

「少しは周りとの交流をはかりなさいよ。せっかく、みんなで来たんだから」

「うん…」


シマは、私に警告しに来たのだ。
私が、クラスの中で浮かないように。