自転車置き場までの道のりは、まだ遠い。
駅を出たすぐのところで、私はようやく、シマに言えた。


「……あのね。付き合うのをやめたいの」

「……どうして?酒をやめるって言っても駄目?」

「お酒……やめても、それだけじゃないし……」

「それだけじゃないって、何?」

「うまく言えない。ごめん。なんか、とにかく合ってないっていう、ただそれだけ」

シマは、絶望をにじませた声で言った。
「……俺は、合ってないとは、思ってなかった……」


ごめん、シマ。ごめん、シマ。
私は、この場から、すぐにでも離れたかった。


「じゃあ、もう俺ら、駄目ってこと?」

「……」
私は、無言で下を向く。

「そうか…………まさかな……」
シマが、思いがけず、鼻をぐすっといわせた。

「ごめん。シマ」

「いや。謝らなくていい。…ただ今日は、家まで一緒についていってもいい?」


涙声のシマの申し出を、私は、とてもじゃないが断り切れなかった。
今日限りのことだ。あと少し、我慢すればいい。
駅から家まで、徒歩で30分間だ。