周りが救急車の話に変わったのを見計らって、雫はこっそりと逃げ出した。
って言うか全速力で逃げ出した。
「はぁ……はぁ……。ここまで来れば大丈夫だろう……」
近くにあったベンチに腰かけて少し休憩する雫。
ふと、前を見ると、見慣れない建物があった。
どこまで走って来たんだろう……?
周りを見渡してもここがどこなのかわからない。
もしかして迷子……!?
それだけは絶対にやだ!恥ずかしすぎて死んでしまう!
あれこれ考えてる雫。とても4月から高校生には見えない。
「ん………?なんか良い匂いがする」
花より団子。雫のためにあるようなもんだ。
この建物、パン屋さんだったんだ……。
どう見ても普通の住宅にしか見えないのに、
玄関付近には『パンの店』と書かれたプレートが掛かっていた。
どうやら開店中のようだ。

