エレベーターの中には他に人が乗っているというのに、思わずバンバン足踏みする私。





「あーも、早く着いてよ」





携帯を持ってくれば良かった。


オフィスにいた時は焦ってたから書類だけしか頭になくて…


よくよく考えるとすれ違いになる可能性があるし、もう取引先に向かったかもしれないのに。


携帯があれば待ってて下さいの一言が言えたはず。





―――ウィーン―





エレベーターの扉が開き切る前に飛び出す。


流石にスーツでヒールのある靴で走るのはきつい。





「あの、すみませーん」





出口に居た警備員さんに話しかける。





「なんですか?」

「営業部の佐渡課長…。佐渡朋課長はいつ通りましたか?」