「見かけた一条さんは、トレーニングウェアを着てなかったか」


彼方の問いに、湊は眉間に皺を寄せて考え込む。


「…着てた、かも。
布の音が大きかったし、白っぽい服な気がしたし。」


「よし。
じゃあ、部屋に帰ってくるまでに誰か見なかったか」


「…誰も」


「よしよし。
見かけた一条さんはどこへ行ったかわかるか」


「ホテルから出ていった。
階段の上から見かけただけだから会ってはいないけど」


「よしよしよし。
これで一条氏殺害のトリックは読めたぞ妹よ」



頭を撫でながら、彼方はニヤリと笑った。

わざとらしく『トリック』だなんて言うのに、湊は顔をしかめる。