十月十五日。 その時を待っていたかのように、黄色い満月が空に浮かび上がっている。 史恵は、その満月を、台所の窓から見上げ、小さな溜息をついた。 「母さん」 背後から聞こえた声に史恵は動揺しながら、微かに濡れたまつ毛を指先で拭うと、何もなかったように振舞い夕飯を食卓に並べはじめた。 「いや~ん、今日も仕事忙しいのよ~見送りできなくてごめんね~」