なんて言っていれば、しゅるっといい音がした。衣擦れみたいにおしとやかで、いやらしい想像をしてしまうような音だが。
鞘が抜けた。
「……お前」
「誤解ですよ、決して先生を殺したいと思ってません。ゴキブリを思い出しただけです」
こんな程度の殺意でいいとは驚きだった。
始めて、筒の正体を知る。
短刀。
ヤクザで言うなら、ドス。ハラキリーとして外人さんへのいい土産になりそうだ。
柄の部分に“小狐丸”と彫られてあった。
てっきり、子狐と思ったのだが、まさかの小狐。日本語ってほんとめんどくさいよなぁ。
切れ味は本物だろうかと指先を当てれば、血が滲んだ。本物だ。


