人の血液はキタナイ。
死肉はエグイ。
それを触った僕の手のひらは、ヨゴレテいる。
通算、十回目の手洗い。皮膚がただれるほど、ハンドソープを使って洗った。
血は洗い流せる。だが、記憶は洗い流せない。
付与された記憶は、今現在に再生される。脳のテレビにリモコンはない、消したいと思っても、以前、つけっぱなしだ。今はエコな時代というのに。
再生されるは、男の死体。 瞼裏にはりついたのは、“彼女の顔”。
本当に瞼裏にいるならば、目をくり貫きたいが、それは間違っていると分かっているのでやらない。逆に視界が無い世界では、“あの時”ばかりが繰り返されるだろう。


