「忘れられないか、まだ……」 ぴりぴりと指先が震えている。口の中はなんとも言えない味わいになっていた。 相棒にさよならした後に、ショルダーバッグに入れた血だらけのシャツを取る。 前面に羽がプリントされているという、製作者の個性を尊敬し、だから500円なんだと納得して買った黒シャツ。 部屋着として使っていたために捨てるのにためらいなかったが。 「わあ、いいデザインじゃん」 片羽だけが血で染まっていた。ちぎれた羽みたい。奇しくも、捨てるのを惜しむ。