「いってきます」
先生の体から離れる。
嘘をつかない先生は笑ってくれていた。淡く薄く、微笑を携えた、巣立ちの鳥でも見るような――先生が僕にした最後の救い。
「いなくなる僕が言うことじゃありませんが、先生も幸せになってくださいね」
「安心しろ。私は不幸にはならない」
「そうやって未来を断言するだなんて、さすが魔法使いというか。未だにファンタジーがうやむやな印象の僕ですが、先生に呼ばれるなら死んでからでも会いに来ますよ」
「最後の別れが台無しだな、それでは。――まあ、だが、それでも。その時は、茶でも飲み交わそう」
会いに来るのは先生を救うという意味でなんだけど、それでもいいか。
会える保証なんかないけど、そんな約束があると、ますます『いってきます』をする足取りが軽くなる。


