影が重なる。
やけに温かいものが僕を包み込んだ。
背中と頭に力強く、優しい指先が。
「達者でな」
別れを告げた。
震えてもいなく、いつもの先生らしい毅然とした音色なのに、体に回された腕が感情の加減が分からぬように、爆発する前に僕を抱いて平静を繋ぐようだった。
心残りなんてなくしたと思ったのに、こうも僕を想う人がいるのであっては、こちらが平静を保っていられない。
「もっと……早くに先生に会えたらなぁ、なんて」
「思いもしないことを言う口だな。会わないよりはいいだろうに」
「ちょっとしたお笑い交えたかったんですよ。じゃなきゃ、先生を泣かしてしまうような気がして」
「バカを言え。お前が笑って行くのに、泣いて見送れるか」
先生らしい答えだ。この人は最後の最後まで僕に最善を与えてくれるらしい。


