「感動すらも覚えたな。聞けば、娘から貰ったもので長年愛用しているらしい。インクがなくなっても入れ替えできるタイプだから助かると語るあいつも喋ればなかなか粋でな。
興味もあったものだから、以来、茶飲み仲間さ」
「短い間に先生は誰ともフレンドリーになりますよね。――ええ、ほんと。先生はいい人だ」
「やけに持ち上げるな」
「そりゃあ、これが先生との最後の会話ですから。恩人を誉め称えたいんですよ、はい」
今日に限って、なぜかセミの声がしなかった。
まるで遠慮しているみたいだ。僕と先生の最後の対面に。
「先生は何でもお見通しで、僕の願いを叶えてくれる。僕は何も返してあげられないのに……神様みたいだ」


