「た、たつ、ひゅ、はっはっ」
喉元に手を当てたと思えば、何かを口にかきこむかのように手を動かす。
あげく、息を吐きまくり、あっちだこっちだと移動し始めた。
「どこに行っても無駄だ。“お前が吸える空気は無い”。消させてもらったからな」
そんな異常行為に先生は当然のように付け足す。
空気を消した?
確かにそれなら豚が空気を求めて移動したり、見つからないから自分が吐いた息をまた吸うようなサイクルに試みるのも分かるが。
「死にはしないし、障害も残らんように配慮はしてあるさ。ただあと数秒で意識は消えると思うが」
――魔法。
先生の技だ。
まさかそんな不可思議なことが起こるとあの豚は思わないし、雫だっていきなりあの豚がのたうち回っているとしか見えないだろう。


