僕が止めようとした先生はある程度の距離で歩みを止める。
先生なりの救いがこの豚にもあるのか。
もうこいつはやってしまった。つきまとい、拉致をし、強要した罪。だが、それでもまだ軽い方だろう。
殺人――“僕と同じ場所”に立てばこいつはもう手遅れ。救いようがない生者となる。
「やめておけ。でなければ、手荒な真似をして止めることになる」
「来るなっ」
「その子を離せ」
「来るなあぁぁぁっ!」
雄叫びがあがった瞬間、僕は雫まで突っ走った。
本当に首を折るつもりだと思ったから。
突進し、豚を突き飛ばす。
――で。
「ひっ、ひゅっ」
こちらが肩透かししてしまうほど、豚が畳に転がった。
変な声をあげて、ごろごろと。のたうち回ってんだと知ったのは、たすけてと聞こえたから。


