結論からするに、僕が今すべきことはあの豚が僕を犯したくなるほど魅力的に振る舞い誘惑しろということか。
「……」
指先が震えたが、泣いていた雫が――こちらに向かって首を振るのを見て止まった。
『やっちゃダメっ!』
なんて必死こいて僕を庇おうとしている。
あの様子じゃ、逃げてとも言いたげだ。
「ほんと、だから助けたいんだ……」
ぼそりと誰も聞き取れないぐらい小さく出た本音。
僕は羞恥に晒されるだけで死にやしないのに、雫はあんな豚に命を握られながらもなお逃げろと。
普通、そこは助けてでしょ、雫さん。構わず逃げろだなんて映画俳優並みにかっこいいじゃないですか。
「ハッ……」
やっぱり雫だ。
すっごい安心した。
どんなことをしてでも、助ける意味が大きすぎるんだから。


