(二)
木楽東団地A棟。
くたびれた灰色の壁は曇天以上に憂鬱で、暗く感じられた。
305と言われて、今、三階にいる。
「はっ、はっ……がはっ、ぐ……!」
その廊下で吐いてしまった。
何せここまで休みなく走ってきたんだ。命ギリギリでドクターストップがかかってもおかしくない。
「づ、ふっ……」
何にも食べてないから出るのは液体だけ。なのに異臭と酸味が口から広がっていく。
心臓を落ち着かせようにも止まらないし、息を吸おうにも吐きまくる。
かなりの無茶をしたらしい。
301と書かれた木の板で目張りがしてある扉に手をつく。
「はあ、うえっ……」
波が収まったか、吐いた時に出たヨダレと鼻水を袖でふいて、汗まみれなのを知った。


