「じゃあそこでいいです。行ってください」
戸惑いながらでも、首にある刃に有無を言えなかったか、Bはギアを握った。
オートマだから、操作は楽だろう。
時折、ごくりという唾を飲む音がするだけで、Bは運転してみせた。
息が荒くも、綱渡り意識か集中力はあがっているらしい。
「ほ、ほんとに、たすけ……」
「助けますよ。死体を捨てさえしてくれれば」
何台かの対向車があったが、夜のため車の内部は見えないし、歩行者に至っても、ガラスにスモークでは中は見られない。
隔離した空間だった。誰もこの車が死体乗せているとは思わないだろう。
車のボディが大きく振動した。コンクリートじゃない道を走ったかららしい。


