車が入らないという庭には、松の木やらがあった。
喧騒がないと言ったが、虫の声が煩わしく、暑苦しい。夜になればきっと、田んぼからカエルの合唱が聞こえてくるだろう。
「あ、中に入っていいんですか。その……自殺志願者さんがいるなら、顔見せはしたくないんですけど」
玄関にはスニーカーが一足あった。先生のかとも思うが、妙に先生には似合わなそうな感じなので違うと予想。先生はハイヒールだろう。
「奥の部屋で寝ているから大丈夫だ。それに紋付き袴に着替えるなら、外と言うわけには行かないだろう」
確かに、な意見で僕は大人しく家に入った。
リビングというよりは居間と和訳したい畳部屋に通される。高くて、骨組みが剥き出しな天井。
小物もなかなかで、茶箪笥やら囲碁盤、井草の座布団に、長い机。ここまでくるとドラマのセット並みに出来すぎた和風ぶりに思えた。


