「ま、待ってっ」


どしんどしん、なんて地鳴りはしないが、肉の塊が僕の前に立ちはだかった。


ええい、どけえぇ。だなんて戦国武将気取りは現代では、引かれるために立ち止まった。


雫に言われようとも無視していたのに。

話しかけてきたのは、例のストーカーだった。


緑の半袖から、むちむちの二の腕が伸び、僕に触ろうとした。


一歩下がれば、その手は空振りになる。


「ど、どうして、避けるの……!」


「……、言ったら傷つくと思いますけどね」


汚いから触るなと言わないであげただけの良心は見せてあげたというのに。


今日もどうせ、僕を近くから見て、嗅いで、つけて、で終わりだと思ったのに、痺れを切らしたか話しかけてくるとは。