(一)


「そーちゃん、やつれた?」


「さあ」


大学の廊下。窓ばかりがあり、日光が目に痛い昼間に、隣歩く雫が言ってきた。

痩せたではなく、やつれたとは、遠慮というものを雫は知らないらしい。まあ、雫の素直さには好意を持つが。


あいまいに回避したが、肉食べない、吐くを繰り返せば、体重も減るだろう。

ただでさえ小柄が、より貧弱になったよーだなんて、うるさいと怒りたくなる。自分に。


「ねえ、風邪とか?病院行こうよ。ウチ、付き添うよ」


「いんや、平気。夏バテとかだからその内治る」


食欲ないのはそのせいだと言っといた。

「そっかぁ。倒れないようにするんだよー。お水はいっぱい飲んで」


「お母さん雫だな」