「人肉に手を出すほど空腹なら、近くのファミレスでなんか奢りますが」
「ああ、いやいや。俺ね、人間の体液とかじゃなきゃ、満腹にならないから」
頭が赤信号を出している。止まれの意味じゃなくて、危険の意味の信号。
カニバリズムだったか、誰かの肉を食べるのは。
人の趣味に、殺人犯たる僕が四の五の言うのはひどくお門違いだが、こうしてこんなイケメンがさらりと食べたいというのを見れば、ドン引きだ。
「……」
「やだなぁ、そんな目しないでよ。別に異常とかじゃなくて、俺の場合――ああ、うん。人間じゃないから、君たちと違うんだ」
「人間にしか見えませんがね」
「疑り深いなぁ。本当なら羽とか出せるんだけど。今、俺は逃亡中の身でね。そこいらの人間と同じように、自分の力を隠匿しなきゃ、追い人に見つかるから出せないけど。
……言う人になれば、吸血獣って俺は呼ばれているかな」


