心の中で合掌をして、立ち上がる。
ここで返り血のついたジャージを着替えてしまっていいだろう。
懐中電灯を拾ったあとにボストンバックを――
「ねえ、それどうするの?」
心臓が喉から飛び出た。比喩だけど、まさにそれだ。
寿命が縮まったような、汚く言えば尻の穴がすぼまっただけど、改めて言えばやはり汚いので取り消した。
光のごとくスピードは人間には出せないので、反射のごとく振り返った。
「放置するなら、貰っていいかな」
男がいた。
すらりとした体型だ。僕が当てた懐中電灯の光にかるく目を細めながら、柔和な笑顔で。
「ダメ?」
死体を指差しながらそう言った。
ちょっと待て。三秒くらい脳をフリーズさせてくれ、冷静になりたい。


