「うっそ」
小狐丸を眺めたあとに、“その事実”を確認するため、またおっさんの顔に刃を刺した。
おでこ、頬、頭。どれもこれも、骨がある堅い部位。
「わっ、やわらかっ!」
声を出してしまうほどの事実があった。
骨をつく、ごりっ、とした感覚が切っ先から伝わらないのだ。
なのに、微かな抵抗があるあたり、骨は切れているらしい。
頭部は刺すところが見当たらなかったために、次は胴体。
骨だけでなく肉に至っても、このおっさんが上質の霜降り牛肉かのような切れ味を味わう。
血が刺した時にではなく、“抜いた時”にしか出ないのだ。
無駄な刺突をしていない。刺した場所だけを切り、他の細胞を傷つけない。ナノレベルで細胞を切っているらしい。


