だらしない犬のヨダレのごとく、文字通り節穴となった右目から血がどくどくわいていた。 なみあみだぶつ、と冒頭しか覚えていないお経を唱えて、ショルダーバッグにケチャップもどきがついた包丁をしまって、颯爽とその場を去った。 ああ、蒸し暑いと、虫の鳴き声がわずらわしい。寝起きの目覚ましのごとく。 ついで、どこからともなく聞こえる。うげらぁという例えようもない声。 「……」