薄い朱色な空の下。
私は黙々と、南の砂丘へと続くであろう林道を歩いていた。

そう、黙々とっ。


「……我が姫、そんなにゆっくりと歩いていたら、日が暮れてしまいますよ…」

「…………」


村を出て、2日目。

虎白を西の渓谷へ届けるには、南の砂丘を抜けてから西の地へ回り込まないといけない。

この四彩華の中心には、朱い空高く連なる広大な山脈地帯があるから、それを越えるのは一般的には無理な訳。


私は、揚羽。
蝶の様に自由に旅をする、
それに憧れていた訳よ。

気ままに寄り道したり、
虎白と2人で、楽しい旅路になるはずだったの。

なのに…


「…我が姫。私の声、ちゃんと聞こえています?」

「……ぅるさ…」


……予想外よっ。
ヒドいわ、気分が台無しよっ。
ババ様を恨むわっ。


「…我が姫?もう少し速度をあげて下さいね?」

「――…うるさいわねっ!!あんたはっ、黙って私の10歩位後ろを、ただ付いて来れば良いのよっ!!」

ついに耐えかねて、
私は無視していた後ろの人物を振り返ると、そう怒鳴ったわ。

急に体の向きを変えたもんだから、肩に乗っていた虎白が「ぎゃんっ」と私の首で鳴いた。