母さんのしていた形見である耳飾りをコトリとテーブルに置き、代わりに虎白とお揃いのそれを耳に通す。

すると…


『…うぅ~。痛い、ヒドイ。痛い、ヒドイ。うぅ~ジンジンするよ~ぅ…』

床からは、
聞き覚えのない知らない声。


「――…え?え?何?」

蓮と美玲さんが私の様子に戸惑う中、ババ様からは愉快そうな笑い声。

そして、
虎白から聞こえるのは、それまでの「にゃあ」ではなく、


『…ヒドイ。何なの?この婆さん。乱暴~。痛い~』

私たちが喋るのと何ら変わらない「言葉」だった。


「……虎白の…声が、聞こえる…わよ!?」

「…良かったな、波長が合って。その耳飾りがある限り、もうお前とその虎は言葉が交わせるよ…。」

「――…えぇっ…!?」

驚く私たちに目もくれず、
ババ様は美玲さんの入れたお茶をすすっていた。


「さぁてね、言葉が通じるところでね、本題に入るとしようかねぇ。」

「…本題…?」

あら、これからなの…
ただ便利にしてくれただけじゃなかったのね…

と唇を尖らせる私に、
まるで「残念だったね、まだ帰りゃしないよ」とババ様は瞳で語った。